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せいぜいたのしくやろうぜ

書いてる人:二木

30代からはじめる映画鑑賞。感想記事は基本的にネタバレしているのでご了承ください。

『コードネーム U.N.C.L.E.(アンクル)』(2015/英・米/ガイ・リッチー)

 見た目も性格も正反対な二人で組まされたバディ、これ以上に何か起こりそうな組み合わせは他に存在するだろうか。近年めでたくBL趣味に目覚めた腐女子のはしくれとして、無論私もその辺のいろいろなアレで期待に胸をふくらませつつ劇場に足を運んだ。

 呼吸のように女をコマすソロとは対照的に童貞丸出しのイリヤ。歴代スパイ映画のヒーローが大抵女にモテているのは、やはり任務をスムーズにこなすために必要なのでは? イリヤ大丈夫? と少々不安になった。まあそこがイリヤの可愛いところだし、逆にソロの初対面の人間に対する器用さはちょっと怖いくらいだ。しかし道具の使い方や戦闘力はイリヤのほうが一枚上手か。同じスパイでも詐欺師タイプと隠密タイプで毛色が全く違う。そんな彼らが自分たちのスパイ道具を自慢し合ったり、いかに多くの盗聴器を相手サイドに仕込むかで張り合う幼稚さは見ていて微笑ましい。
それにしても、遊び慣れたソロよりも、女性経験があきらかに乏しいイリヤのほうがギャビーに流行りの服を選べたのは何故なのだろう。ソロがバッチリ決まったスーツの上に着ていたダサいエプロンの異様な生活感を見るに、ソロはもしかしたらへんなところがユルいタイプなのかもしれない。だからこそ敵に捕まってもあんなに暢気でいられるのだろうけど…。

 しかし今回、主人公コンビをはるかに凌駕するときめきをくれたのは、米ソのスパイ二人組と行動を共にするドイツの女性整備士・ギャビーであった。
60年代当時の流行である彼女のポップなファッションやお人形のようなメイクは現代劇ではなかなかお目にかかれないものばかりで、あまりの可愛さに衣装が変わるたび悶絶。どんなに着飾ってもいつもちょっとガニ股、男たちの喧嘩を怒鳴りつけて成敗、酒もローマの噴水の水もじゃぶじゃぶ飲む。ギャビーは可愛いのにちょっとガサツなところがカッコイイ。そしてそんなギャビーとの、少年誌レベルのラブコメ展開すらものにできないイリヤよ…。この二人の組み合わせも面白かったです。

 映像・演出面の軽快さも格別で、ばかばかしいくらい華麗なカーチェイスや、リズム重視でかなり遊んだ作りをされた基地潜入シーンを見るに、この映画のメインはアクションではないのだ。バディものであり、愛憎劇であり、何よりも優れたコメディなのである。とくに度々登場した「カメラのピンの合ってないところでぼんやり起きている面白いこと」という、映画ならではの笑いの取り方は見事。たとえパンフォーカスであっても成立するギャグなのだが、特にソロがサンドイッチとワインで軽食を楽しんでいる背景で、船で追い回されるイリヤに一瞬だけピンが合う…という演出はお見事。しかもこの時流れている劇伴が何故か日本のあるお笑い芸人がネタのときに流す曲だったので、この曲は欧米でも古くさくてしつこくてギャグ扱いされているんだな…というのがぼんやりわかった。

 私はどんな映像作品も劇伴が良ければ100点満点で120点をつけてしまうのだが、本作に関しては6000点つけてしまいたいほど音楽が好みだった。とくに序盤でベルリンの壁を超える際に流れている「Escape from East Berlin」、あまりにいい曲なので既存の曲かと思っていたらオリジナルだった。音楽担当のダニエル・ペンバートンは16歳でデビューしたアンビエント音楽家とのことだが、アンビエントというには随分とんがってないか…。

「コードネームU.N.C.L.E.」 オリジナル・サウンドトラック

「コードネームU.N.C.L.E.」 オリジナル・サウンドトラック

 サントラも買っちゃった。

 この映画を劇場で見た夜、周囲のお客さんは二人組の女性が非常に多かった。上映が終わった後、少なくとも2組の間では小さな声で「ソ連超受けじゃん」と話していたのが面白かった。だよねー。でも私はソロの襲い受けもありかと思います。きっと次回作があると思うので、その辺の世論の遷移も気になりますね。

2015/11/25 丸の内ピカデリー