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せいぜいたのしくやろうぜ

書いてる人:二木

30代からはじめる映画鑑賞。感想記事は基本的にネタバレしているのでご了承ください。

『アメリカン・スナイパー』(2014/アメリカ/クリント・イーストウッド)

アメリカン・スナイパー [Blu-ray]

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 911から始まったイラク戦争。私がニュースで見ていたそれらの出来事が、重大な事件として既に歴史にしっかりと刻まれているんだと、この作品を見てはじめて実感したような気がする。あまりにもちゃんとエンターテインメントとして面白い作品だったからである。アメリカ同時多発テロが起こってから数年内の映像作品は、どこか事件との距離感が生々しすぎて、ゆえに戦争という事態を外側から捕らえようとするものが多かったように思う。空爆で人が死んだ、派遣されたアメリカ兵が死んだ、そんなニュースに胸を痛めているけれど、うまく想像できないせいで結局は他人事になってしまった。
 本作ではそのイラク戦争を、シビれるくらいのカッコいい戦闘シーンを中心に描いている。80代のイーストウッド監督の手腕には毎度のことながらひれ伏すしかない。あまりの緊迫感に何度も息を止めてしまった。

 主人公がスコープから覗く“敵国”の人間が、次々に斃れて行く。子供や女もいる。それでも彼は、自分が殺すことで何倍もの味方を生かしているのだと信じている。戦場に追い込まれたせいでそう思い込まなければやっていけなかったのか? それとも最初から敵をブッ殺すことこそが彼の望みだったのか? 彼が何度も戦場に戻る理由はわかるようでわからない。
 ただ一つ、彼の妻が感じるた物理的な距離感だけではない孤独に関してだけはわかった。人間を殺すことを知ってしまった魂は、もう元にもどらないかもしれない。彼女は自分の夫がある意味人間ではなくなってしまったことが怖かったのだと思う。