せいぜいたのしくやろうぜ

書いてる人:二木

30代からはじめる映画鑑賞。感想記事は基本的にネタバレしているのでご了承ください。

『WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT』(2015/日本/佐渡岳利)

 去年あたりからPerfumeのライブDVDを買って日常的に見るようになるまで、彼女たちのことはいちアーティストとして好んでいた。彼女たちをテレビ等の断片的な情報でしか知らなかったときは、私もずっと「Perfumeってアイドル、でいいの…?」と思いながら曲を聴いていた。しかし、知れば知るほどPerfumeは「プロのアイドル」だと思い知らされる。

 舞台上での動きについては、少ない言葉で打ち合わせをしただけでもぴったりと息が合う。公演する土地によって、本番直前にいろんな意見を出しながらセットリストを変更する。それはステージからの風景を見ることができる唯一の存在であるPerfume本人の経験からしか導き出せない意見なのだろう。そして咄嗟の変更にも瞬時に対応できるスタッフたちも凄い。私が知る限りでも、Perfumeは曲によって「ヘッドセット」「手持ちマイク」「スタンド付きマイク」の切替があって、そのマイク調整だけでも非常に大変らしい。曲が変われば音響は勿論、照明や特殊効果などすべての演出に変更が生じるのだ。
 彼女たちの素晴らしいパフォーマンスは3人と、そして奇跡のような才能が集まったスタッフたちが積み重ねてきた年月の結果なのだと思う。

 彼女たちが車で移動しているときの会話、楽しそうな食事風景、オフの時間にみんなで観光がてらに出歩く姿、どれをとっても完璧に可愛い。そういうところがアイドルとして夢を与えてくれる。彼女たちの笑顔を見ているだけで、私は幸せな気持ちになる。

 あーちゃんはどこまでもあーちゃんだった。私の思い描いている、優しくて楽しくて音楽が大好きな女の子。

 のっちのことは今までもよくわかんないような、もうわかっているような不思議な感じで見ていたのだけれど、あの大失敗を笑ってやり過ごせるのは彼女の元来持つあっけらかんとした性格からなのだろうというのが劇中のあーちゃんの証言でわかった気がした。

 そしていつもどっしりと構えているように見えたかしゆかが、最後に語った不安な気持ちは私が全然知らないものだった。現在のPerfumeにだってそういう一面があるということを、あまり想像したことがなかったのでびっくりした。

 永遠に見ていたいような素敵な映像でした。でも一番の収穫は、もう何年も前から心配していた彼女たちの足指の骨が、結構大丈夫そうであるという確認ができたことかもしれない。

 

2015/11/28 立川シネマシティ(極音上映)

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2015/アメリカ/アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)

 

 オープニングのドラム演奏にあわせたタイポから痺れるようなカッコよさ。全編ワンカットに見せるような繋ぎ方は非常に個性的だったけれど、それゆえややテンポが悪く感じたが、綿密なドラムの劇伴が緊張感を保たせていた。

 主人公の元大物映画俳優は、何をしても自分が他者からどう見られるか、如何に評価されるか、それしか興味がないようだった。舞台で起こした事件によってやっと注目される結果になるが、彼はあんな方法で評価を得ることに満足できたのだろうか?

 いや、彼が成功したのは名声を得ることではなく、名声への執念を手放すことだったのかもしれない。それが娘の目からは、羽ばたいているように見えたのだろう。

 

2015/11/28 早稲田松竹

『セッション』(2015/アメリカ/デミアン・チャゼル)

セッション(字幕版)

セッション(字幕版)

 

 

 東野圭吾の『殺人の門』を読んだ時と同じイライラを持ちながら鑑賞したが、面白かった。何で、何度も何度も裏切られた相手をまた信じてしまうのか。この関係性に嫌悪感以外のものを見出せるようになったのは、ここ数年突然読めるようになったBL(というかやおい)のお陰だろう。別に恋愛だの性欲に置き換えるつもりは一切ないが、憎しみによって結びついているのもまた人間関係のひとつのあり方だし、その関係からでなければ産まれないものもあるのだ。

 主人公はどんなに酷い目に遭わされても、それゆえどんなに自分がぼろぼろになっても、フレッチャー教授に認められたいという気持ちを捨てることができなかった。間抜けだと思う。でも、この人にとっては既に人生はドラムしかない。音楽しかない。それはイコール、フレッチャーだったということだろう。

 劇中の演奏で、フレッチャーが激しくダメ出しをするものと、うまく演奏できているものが素人の耳でもなんとなくわかるのが気持ちよかった。最後の演奏は圧巻。しかしあの演奏の後、この師弟はいよいよ素手で殺しあうのでは……それは想像するだけでも腹の底が凍りつくような恐ろしい未来である。

 

2015/11/28 早稲田松竹